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【2/2】債務整理とソーシャルワーク(実践編)|レポート

鈴木弁護士

 

「債務整理というのは、本当に定型処理で済む事件か?」

このテーマは、多くの弁護士の先生が疑問を抱きつつも解決できていない重要なテーマのひとつではないでしょうか。今回、このテーマのひとつの解として、先進的な活動をされている先生お2人の講演が、弁護士とソーシャルワーカーの協働を考える会の主催で開催されました。この記事は、その内容のレポートです。

この会の講師である鈴木愛子先生は、ご自身のブログで「自己破産を申立て、免責を得る」という人生の中で、何度も使えない権利を、本当の意味での経済生活の再生のために活用するには誰が、どこまで、どうケアし、そのコストはどう負担すべきなのか?といったことを記し、問題提起されています。

破産を申し立てる人は、そもそも金銭的に余裕がないから破産申立てをするのであり、どのように解決すべきかは、非常に悩ましい問題という点には本当に共感します。

【1/2】回目はこちら 

 

管財人視点からの債務性とソーシャルワーク

鈴木弁護士:ここからは管財人視点からの、債務整理とソーシャルワークについてお話させていただきます。

私は、57期で15年ほど弁護士をやっています(2019年時点)。これまで、たまたま免責に問題のある事例ばかり担当してきました。過去には、詐欺破産罪で刑事告訴の直前までやったこともあります。先ほど、お話してくださった山田先生のアセスメントは素晴らしいものでしたが、そのような弁護士ばかりではないということが現実です。
 

代理人の質により「債務整理の過程」は大きく異なる

破産の場合「免責」になることがほとんど。

弁護士の立場から言うと、債務整理は「点」の作業と捉えられがちです。しかし債務整理とは、本来的にはお金との付き合い方、家計の見直し、同居の家族との問題の整理にまで介入していくことが必要なものです。

債務整理後の理想的な状態へ向けて、債務性のプロセスへ落とし込んでいくことが必要と考えます。代理人が免責不許可事由を創設してしまっている事例を見てみましょう。

■事例

  1. 重度の双極性障害が背景にある投機(FX)による負債(2500 万)
  2. 複数の法律事務所を回るも、免責が難しいと示唆される
  3. 債務整理についてCMをしている某事務所に免責は大丈夫と言われ、当該事務所が請け負う
  4. 申立書に借入の原因は【生活費】と申立代理人事務所において記載⇒客観的事実と異なる記載のものを裁判所に提出
  5. 預金通帳を見れば一見して証券会社との取引があることが分かる事案⇒管財人の調査で証券会社の口座を多数持っていることもすぐ発覚
  6. 病気の影響で本人からの聞き取りも困難(興奮して怒鳴る等)⇒代理人はほとんど破産者と面談しておらず信頼関係なく制御できず。(事業再生と債権管理No.153 P141〜142 破産管財人による免責調査の実際(大迫恵美子弁護士)より

投機している事実は、通帳などを見ればすぐにわかるのですが、それにもかかわらず生活費と記載し、誤魔化そうとしており、明らかに代理人が嘘のことを記載しているという事例です。

免責不許可事由には嘘の説明をすること、管財人の調査の邪魔をすることが該当します。つまり、この事例では、代理人が免責不許可事由を創ってしまっているということになります(※過去には、嘘の説明を記載したのは、代理人のせいであるとして免責になった事例もあります)。
 

免責不許可事由は浪費だけでなく、最も重視されるのは虚偽説明など

最も重視される免責不許可事由は浪費ではありません。(破産法252条1項)免責不許可事由は、大きく分けると3つの類型に分類できますが、特に問題なのは、弁護士のところにきてから発生してしまう【申立・開始決定後に発生する免責不許可事由】です。

債権者を害する類型

  • 詐害目的での財産の不利益処分行為(1)ex財産隠匿
  • 不当な偏頗行為(3)
  • 浪費賭博(4)
  • 詐術による信用取引(5)

 
破産手続上の義務違反・管財人の職務妨害の類型

  • 申立・開始決定後に発生する免責不許可事由
  • 虚偽の債権者名簿の提出(7)
  • 調査協力義務違反(8)
  • 管財業務妨害行為(9)
  • 破産手続・免責手続上の義務違反(11)

モラルハザード防止の政策的な類型

  • 免責許可の確定から7年以内の再度の免責申立て(10)

図表その1

受任通知は、債権者からの追求を止める効果があるが、これは調査のためのものであり、この間に、新たな借り入れなどをされた場合は、弁護士の管理ができていないとして責任が問われることになります。

破産は、なんの落ち度もない債権者へ、国の制度を使って借金をチャラにして欲しいというお願いをする手続きだということを再度認識する必要があるでしょう。

 

弁護士介入前の免責不許可事由と弁護士介入後の免責不許可事由

相談前に起こっていることは、基本的には、もう変えることのできない過去です。また、債務者本人としては、認めたくない、家族などに知られたくない。言いたくない。追及されたくない。といった防衛機制が働くため、不合理な弁解や浅はか嘘にに受けとられてしまう説明をしてしまうことはよくあることでしょう。

申立前に代理人による聴取に対してそのような反応をするだけなら、免責との関係では特に、大きな問題にはなりません。しかし、客観的事実と異なる内容の申立や、開始決定後の管財人に対する虚偽説明は、弁護士介入後に新たに発生した免責不許可事由となってしまいます。

したがって、代理人と債務者本人とが信頼関係を築けているか?どのような聴取・指導をしているかで、新たな免責不許可事由(嘘をつく、誤魔化してしまう、逃げてしまう)の発生の有無や程度は大きく変わってきます。

判例タイムズ1403号には、裁判官から、申立代理人に対し、破産者に対する破産法上の義務の遵守や免責不許可事由に対する説明の依頼が掲載されています。

”「免責不許可とされた事例の中には、破産者が、自らの義務についての理解不足等によって、破産申立ての直前や破産手続開始後に至って、財産の隠匿や虚偽説明などの免責不許可事由に該当する行為に及んでいる事案も散見されるところであり、申立代理人には、破産者に対し破産法上の義務の遵守に関して説明するとともに、破産者の免責不許可事由に該当する行為の有無について必要な調査を行い、該当行為が存在する場合には、破産申立書に記載することに加えて、可能であれば、早期に適切な是正の措置を採ることについても、ご検討をお願いしたい。」”(「東京地裁破産再生部における近時の免責に関する判断の実情」(平井直也広島高等裁判所判事(前 東京地方裁判所判事)判例タイムズ1403号)
 

管財人による免責観察について

管財人は、基本的には、免責不許可事由があっても「裁量免責」にすることを考えて免責観察をしています。従って、開始決定後に、管財人の免責調査などに積極的に協力(浪費の原因に対しての対応策や、家計簿の作成指導など)をすることで、開始決定前に生じた過去の失敗についてもリカバリーできる可能性が高まります。現在の免責観察型の管財手続きとは、免責をさせるための救済制度と言えるでしょう。

管財人には、広範な調査権限があるため財産の隠匿は難しいでしょう。管財人は、虚偽の発見ではなく、虚偽説明に、どう向き合ってもらうか?どうアプローチすべきか?に悩みを感じています。オープンリーチで説明をし、是正の措置をとって欲しいです。

 

まとめ

世の中には、やったこと方がいいことは山ほどありますが、それをやりきれている人は多くはありません。山田先生も鈴木先生も、実際にやっておられ、やりきっておられます。

もちろん、それは、簡単なことではなく、大変なことです。お二人のお話の端々から感じられたのは、正義感と、目の前の方への愛情でした。

当日は、お二人の先生による生の事案(無論、内容は変更されていました)に基づく事例紹介もあり、本当に学びの多い講義でした。

今回学んだ、

  • 相談者の特長にあわせた対応方法
  • 最終的なゴールを見据えた、方針の決定とプロセスの構築
  • 適切なアセスメント
  • オープンリーチによる説明責任のまっとう

これらのことは、どんなことにも共通する大切なことなのかもしれません。破産や債務整理という手続きを踏んではしまったが、その後のその方の人生がより良いものになればとおっしゃるお二人の先生は、本当に素晴らしいと感じました。

■レポート作成者:ユナイト株式会社 角田行紀

 

|Information

懇親会の様子

なお、講演後は講師の先生を囲んでの懇親会がありました。こちらでは参加者は、直接各先生に質疑応答をされておりました。

次回は…

来年度より江東区にてスクールロイヤー事業はじまる!
https://www.facebook.com/events/824166147931776/

日時:平成31年3月27日(水)19時〜21時(21時よりケータリングを利用した懇親会予定)
場所:東京都文京区本郷3-40-10 三翔ビル本郷4階 social hive HONGO(小野田髙砂 法律事務所内)
費用:5000円(懇親会費込)
講師:鬼澤秀昌先生(第二東京弁護士会)

参加希望の方は、このイベントの参加希望のボタンをポチっとお願いいたします。

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講師の鬼澤先生によるnoteもぜひご覧ください。先日、江東区の予算概要が発表になり、その中には、スクールロイヤー事業が盛り込まれました。ここに至るまでは、鬼澤先生たちの地道な調査・ロビー活動がありました。

行政に働きかけて新規事業をつくりあげたモデルケースとして体験談をお話しいただくとともに(テーマその1)、いまだ、何をやってくれる存在か、論者によって多義的なスクールロイヤーについて、江東区は、どういう存在として制度設計したのかその事業概要をお話しいただき(テーマその2)、さらには今後、どのように進めていきたいと考えているのか、スクールロイヤー制度の未来についてお話しいただく(テーマその3)ことを考えています。

今回も、会場のみなさんと双方向の時間を長く取りたいと考えております。ぜひ、ご参加ください!

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