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中小企業のための、大企業に負けない採用力と人材育成力のつけ方|ブレークスルーパートナーズ 赤羽雄二氏のセミナーレポート

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「人材採用・育成はすべての企業の成功の鍵です」そう語るのは、ベストセラー『ゼロ秒思考』の著者である赤羽 雄二氏。

現在、テクノロジーの進化に伴う市況の変化や、人材獲得競争の激化などにより中小企業を取り巻く環境は、大きな変化を迎えています。そこで、これまで大小さまざまな企業の成長支援をしてきた赤羽雄二氏が、中小企業がいかにして採用力や育成力を身につけるかというテーマでお話をされました。

今回、赤羽雄二氏が紹介したメソッドの一部を読者の皆様にご紹介します。

 

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PROFILE 赤羽雄二 氏

東京大学工学部を1978年に卒業後、小松製作所で建設現場用ダンプトラックの設計開発に携わる。1983年からスタンフォード大学大学院に留学。機械工学修士を修了。1986年にコンサルタントファームのマッキンゼーに入社し、1990年から同社ソウルオフィスにて、韓国大手企業の経営改革コンサルティングに携わる。2002年からは、ブレークスルーパートナーズ株式会社を設立。「日本発の世界的ベンチャー」を1社でも多く生み出すことを使命に活躍している。近著『変化できる人』(ぴあ)をはじめ、『セロ秒思考』『速さは全てを解決する』(ダイヤモンド社)など著書多数。



今後10年で、日本企業や仕事はどうなるのか

赤羽雄二氏(以下、赤羽):昨今、AI、ロボット、IoT、ブロックチェーンといった話題を耳にしない日はありません。テクノロジーの発達により、日本や日本企業と仕事を取り巻く環境は劇的に変わります。

残念ながら日本はITの活用に弱く、ベンチャーによるイノベーションや新産業創出力も貧弱といった課題を抱えています。日本企業は世界の時価総額ランキング(※2018年3月4日現在)の中で、20位内に入ることもできていません。

f:id:legallabmedia:20180810003143p:plain※トップ4はアメリカが席巻。中国や韓国が台頭している。

1980年代後半までは日本の製造業が世界を駆逐すると言われていたのも今は昔。日本および日本企業の競争力は危機的な状況です。

そのうえ日本は、少子化で人が減るうえにAIやロボットが仕事を奪います。仕事を職種ごとに細かくグループ分けしたとすると、それぞれのグループのトップ1/3の人たちは多分、安泰です。しかしボトム1/3の人たちは、上のグループやトップ層から脱落してきた人たちに追い出されて仕事を失うリスクが非常に高いと思います。ミドル1/3は努力次第ですね。

仕事量だけではなく、求められている仕事と個々人がやりたい仕事、実際に提供できる仕事のミスマッチも極めて大きくなるでしょう。

こういった時代に備えて自らが生き残るには、これからの10年間で劇的に進化していくことが予測されているテクノロジー(※下記の図を参照)について学び、その活用方法を考えることが必要です。

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加えて国際情勢にも目を光らせて、自分が他国の代表なら日本をどのように利用するか、日本にはどういった態度を取るかを考えてみる必要もあります。

中国、インドが地域のスーパーパワーになることや、アジア、アフリカが大きく発展することにも注目すべきでしょう。

これらを考えると現代は、過去数百年を振り返っても類を見ない激動の時代だと思います。個人としては問題把握・解決力を強化し、スピードと生産性を大幅に上げて、自分の身を守るしかないと思います。



優秀な人材を惹きつけるために必要な経営者の姿勢とは

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こういった状況を踏まえると、日本の企業は根本的な経営改革に取り組みつつ、同時に、優秀な人材を採用し、活かし、新事業を成功させていかなければなりません。

とはいえ「人材を採用できない」「なかなか良い人材が入社してくれない…」という悩みが多いのではないでしょうか。

私はマッキンゼーで14年間、日本の大企業や韓国のLGグループなどの経営コンサルティングをしていました。その後、数十社のベンチャー企業の共同創業や経営支援、また大手アパレル企業や3本の指に入るコンビニの経営支援、大手家電メーカー、中小企業などの経営支援に多数取り組んできました。インド3位のバイクメーカーや、ベトナムの200名強のブロックチェーンベンチャーの支援もしています。

そういった経験から私が導き出した『優秀な人材を惹きつけない要素』は下記のとおりです。

  1. 経営者のビジョンがよくわからない、目線が低い
  2. 会社の体質が古そう。活気がない
  3. 仕事が面白そうでない、成長できそうにない
  4. 上司がはつらつとしていない、上司が尊敬できない
  5. IT・インターネットなど、今時なら当然のツール導入に消極的

これらが該当するなら、改善が必要です。

まず1. 経営者のビジョンがよくわからない、目線が低いといった問題の解決には、ビジョンを明文化し、常日頃から社員たちにビジョンを発信する必要があります。経営者の言行不一致が一番ネガティブなので注意して行動し、社員のやる気を削がないようにします。

また5. IT・インターネットなど、今どきなら当然のツール導入に消極的といった部分も非常にまずいです。Eメールを自分で出さない、出せない経営者がまだまだいます。さらには、IT・インターネットの活用を強力に推進している経営者は日本では決して多くありません。

では、優秀な人材を惹きつけるためにはどうすべきなのでしょうか。

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これらはできて当たり前だと思う人がいるかもしれません。しかし、現実ははるかに厳しいです。経営者が号令をかけるだけでは全く不足で、腕まくりして推進して初めて動きます。「当たり前」だと思う人は、かなり理想主義か、少なくとも現実がわかっていないと思います。これらの大半ができれば、エクセレントカンパニーになれるといって過言ではありません。



中小企業が少しでも優秀な人材を採用するには

中小企業が少しでも優秀な人材を採用するには、下記の5項目が鍵になります。

  1. ビジョン実現のために必要な戦略・組織を明らかにし、実行する
  2. 採用すべき人材の役割、必要スキル、採用条件などを明確にする
  3. 自社ウェブサイトにビジョン、組織、人材活用・育成方針を明示する
  4. 他社よりも確実に成長できる、やりがいがあることを納得できるように伝える
  5. パワハラ、モラハラをゼロにする

まず1. ビジョン実現のために必要な戦略・組織を明らかにし、実行する、については、数ページ書いて明文化し、実行するという基本が欠かせません。明文化していない企業も多いですが、書いてあっても古くなっていたり、書いてあることと別の行動をしたりなど、これほど基本的なことでも守られていないことが多いと思います。

次に2. 採用すべき人材の役割、必要スキル、採用条件などを明確にする、については、採用すべき職種や必要な経験・スキルを紙に書き出します。そしてまとめた内容を、自社サイトに記載し発信します。加えて、同業他社をリサーチし、その他社よりも確実に成長できることや、やりがいがあることも納得できるように伝えられることが望ましいです。

最後に5.パワハラ、モラハラをゼロにする、ですが、言うまでもなくパワハラ、モラハラは言語道断です。パワハラで成果は上がらないし、社員が定着しません。お客さんに対しても失礼です。良いことは何もないのです。パワハラ気味でないと部下が言うことを聞かないという誤解が蔓延しているようですが、今ではとうてい通用しない、古い考え方だと思います。もう部下もついてきませんし、人事部も黙って見過ごしてはくれません。



中小企業が本気で人材を育成するには

優秀な人材に何とか入社してもらったら、本気で育成する必要があります。もちろん既存の社員に対しても同じです。研修制度を充実させれば良いと考えている会社が多いかもしれませんが、次にあげる5つの取り組みができていないと育成は上手くいきません。 

  1. 全社員の役割、責任、権限、報償を明確にする
  2. 全社員の業務の必達目標、実施方法、日程、投入資源を明確にする
  3. 上司は部下をきめ細かくコーチングし、結果を出すよう支援する。パワハラ厳禁
  4. 昇進・昇格条件を明確にし、公正な 人事制度を導入し、社長がリードする
  5. 一人ひとり、長所、成長課題、成長目標、 本人・上司の取り組みを整理し、合意する

これらを明確にするには、下の図のようなタスクシートを用意し、各項目をできるだけ具体的に記入して、上司と部下で合意します。ほとんどの上司は、口頭で部下に指示をしたり、ひどい上司になると指示すらせず、あうんの呼吸で部下が仕事をちゃんとしてくれると期待したりしていますが、そのようなことで満足のいく成果は出せません。結果としてパワハラ的発言をさらにしてしまうことにもなります。

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次に、5. 一人ひとり、長所、成長課題、成長目標、 本人・上司の取り組みを整理し、合意する、ですが、長所を7~8項目、惜しいと思われる成長課題を4~5項目書き、成長課題をどこまで改善すべきかという成長目標を明示して、それに対して本人はどういう努力をすべきか、上司はどう支援すべきかを具体的に書きます。

簡単なようでいて、このように体系的に一人の人の成長を加速するアプローチは他にはほとんどなく、実際やっていただくとその効果に驚かれると思います。

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なお、こういったアプローチは、『世界基準の上司』(KADOKAWA刊)、『マンガでわかる! マッキンゼー式リーダー論』(宝島社刊)で詳しく解説しています。ぜひ、ご確認ください。

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―――この後、セミナーでは『ゼロ秒思考』を実践するための「A4メモ、アイデアメモ」を書くためのワークショップが開催され、大反響のもとで幕を閉じました。ここで紹介した内容は、一部分のみを要約したものです。

さらに詳しい内容や、『ゼロ秒思考』を学べるワークショップについては、ぜひ赤羽氏が開催しているセミナーに足を運んでみてください。直近のスケジュールはブレークスルーパートナーズのWebサイトでご確認いただけます。



■APPENDIX(質疑応答)

当日は、セミナーに参加いただいた経営者や経営幹部の方々から、講師の赤羽氏へ活発な質疑がありました。その一部をご紹介します。

Q1.経営者が社員に、ビジョンを伝える手段は何が有効ですか?

赤羽:ビジョンは口頭で伝えるだけでなく、パワーポイントで4~5枚程度にまとめて社員に配るほうがブレがなくなります。経営者がビジョンについて話す頻度は月1回程度。事業進捗会議などの場で繰り返し経営幹部、社員にすり込んでいきます。なお朝礼などで繰り返し話すのは、あまり効果的ではないと考えています。朝礼は多くの社員が「早く終われ」と思っていて、マンネリ化しがちだからです。

Q2.当社にはマネジメント力を持った人材が少ないです。マネジメント力は、先天的な能力だという印象があります。既存メンバーを鍛えてもマネジメント力を身に着けてもらうのは、難しいでしょうか?

赤羽:マネジメント力が生まれつき高い人はいます。しかし誰でもコツコツ鍛えていけば、必ず強化できます。腕立て伏せだって、続けているうちに回数を増やせますよね。マネジメント力も同じです。適切なトレーニングをすれば、確実に強くできます。基本は『世界基準の上司』『マンガでわかる! マッキンゼー式リーダー論』などに詳しく述べました。

Q3.組織力強化を目的とした人材育成ノウハウで、有効な手段はありますか?

赤羽:社員全員が3~5年で部署を異動する状態をつくることです。「経理だけを10年やっています」とか、「営業で20年選手です」という社員は多いと思います。しかし、それだと社員の能力が固定化するし、仕事の進め方も属人化しやすいため生産性が上がりづらいのです。

中小企業の経営者からは、「当社は組織の規模が小さいから、全社員を部署異動させるのは難しい」といった声が聞こえてきそうですが、それを可能にするには前任者が後任者にしっかり仕事を教える仕組みづくりをするのに加えて、経営者が覚悟を決めることが大切です。

社員を部署異動させられるのは大企業だけの専売特許ではありません。Googleですら人手不足で困っているくらいですから、いかに社員たちの成長につながる施策を実行できるかを考えていく必要があります。

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